佳代ちゃん(仮名:中学2年生)の場合
家出の体験について、「恐かった」と話し、見つけたときは泣きながら「よかった」と言った佳代ちゃんのお話です。佳代ちゃんはもちろん匿名ですが、ご両親にもお申し出を頂きましたので、少し詳しくご紹介させて頂きます。
5月の学校帰りのある日、佳代ちゃんはゲームセンターに立ち寄りました。補導員にとがめられ、逃げ出した挙句に通報され、お母様が呼び出されました。お母様には「親の顔に泥をぬった!」ととがめられました。
「うち、次の日もいったんよ、そしたら又同じ補導員のおばさんで・・・」そして翌日もお母様は、同じように補導された友達の前で「私は学校の役もしてんのに恥ずかしい」と佳代ちゃんを怒りました。
「ウチもその時腹立って、もうおかんとは顔合わせるのも嫌って感じ。家にはいたくない!って思った。その少し前には、ケイタイ(電話)を親に取り上げられてもめとったし。何もかも面倒臭くなって、プチーッと切れて・・・。『もう家出たるっ』ていうてん。それで『こんな家におれるか』って家を出た。でも、家を出てもっと遊んだろう、と思ったわけやないんやで。書き置きはしなかったけど、家出してから手紙、出そうと思て。実際、家出してみて、まず一番初めに何したらいいのか判らんかったし、考えれば考えるほど不安にもなったし。あたりまえのように食べれて、あたりまえのように寝れた家が早くも恋しなってきて、とりあえず一度きたことのある梅田に行って、あの日はコンビニでパン一個買うて(買って)漫画喫茶で寝てん。変な人にいきなり『遊ばへん~』って声かけられただけやったし。なんか、おもしろ無かったわ。ほんで次の日はインターネットスペース行ってフリーのアドレスを取って掲示板にカキコして家出仲間の募集をしててん。ほんで知り合うた陽子ちゃんと一緒になってん。陽子ちゃんは同級生で、同じように二年になった始業式から数日通っただけでほとんど出席してないねん。私と一緒で、遊びが合わんようになってつまらんようになった人らしい・・・」
きっと二人は、最近こそ見かけない、当時のマゴギャルとして街を遊び回っていたのだとは想像がつきます。茶髪でミニスカート、手にはケータイ。持ち物は小さなバッグが一つ。少なくとも「家出中」のスタイルには見えないです。
「陽子ちゃんは、家出が初めてや無かって色々教えてくれてん。どこで寝たらいいとか、援交(援助交際)のこととか、陽子ちゃんはな、初めて家出したときに、親に『心配したぞ』と言われただけで、何にも怒られへんかってんて、それで『なんや、帰らんでも何て事ないやん』って思てんて、それから、ずーっと何回も家出を繰り返してる人やってん」
非行少年少女がとる行動から考えると、日常遊び歩いているところや、立ち寄り先で家出人を発見保護することは機会として多くある事なのですが、その時点で確保できなかった点で今回はわれわれにとっても反省点が多い案件となりました。
ここから、佳代ちゃんは、人生の中でしなくても良い経験をし、取り返しのつかない傷を心に刻み込む事になってしまったのです。
その翌日に知りあいになったのは陽子ちゃんの先輩という男性でした。その先輩はシンナーの常習者で何度も逮捕されている男性ですが、「おもしろい事ばっかりいう人」と感じ、三人で遊び始めました。先輩の家は親に与えられたワンルームマンションで、「いつも男の人がたむろしてた」部屋でした。その部屋は「すごい変な臭いやった」という程にシンナーの臭いが立ち込める場所で「これやってみ」と言われてからは「それからは覚えてない」というほど、この日を境に佳代ちゃんの記憶は途切れがちになっています。
お母様が小さいころの佳代ちゃんの写真をにぎりしめられて「捜してほしい」と、私どもに依頼してこられたのが、家出から3日後のことでした。
佳代ちゃんは、結局、この2週間後にシンナーでフラフラとしながらコンビニエンスストアで万引きをして補導され、ようやく親元に連絡が入りました。
その時、お母様と佳代ちゃんには。十分とは言えませんが今後の事などについてさまざまなお話をして頂き、「こんな事になってごめんな、あんたがつらい気持ちでいたときに気づかなかった私が悪かった、つらかったやろ、寂しかったやろ」と抱きしめて頂くことができました。そして、自宅での十分な安静状態が続き、佳代ちゃんの笑顔が戻り始めたころ、佳代ちゃんは産婦人科に行くことになってしまいました・・・。
「この辛い体験を、少しでも家出をしようとしている人に伝えて欲しい」そう、佳代ちゃんは言います。「家出をして得になる事には必ず代償があると思う。そう伝えて欲しい」本当の笑顔に戻った佳代ちゃんの経験です。
ほんの3年前でしたら、非行少年少女もタバコなどはなるべく見えない所で吸っていましたが、今は制服姿でくわえたばこの女の子も多い時代です。2001年の1月~11月までの間に、弊社では43回の人捜し調査(家出のみ)があり41件を発見保護。数日間友人宅などを泊まり歩く「プチ家出」が一番多く34人でした。友達との関係が最近、うまくいかなくなった」「親が自分の気持ちを理解してくれなかった」そんなプチ家出の子どもに触れるたびに、親の愛にこそ屈折を感じます。


